逆鱗のハルト

出版社講評

　第２回モーニングスター大賞ファンタジー賞受賞作として奏様作「逆鱗のハルト」を選定いたしました。

　Web小説の流行要素である転生・転移といった設定を用いずに、まとめ上げられた作品です。自分なりの「ファンタジー」を描こうとした作者の意思、意図を強く感じることができました。

　ファンタジー作品では、情報量の多い設定解説が読者の物語への没入を妨げてしまうことがありますが、この物語の世界観は読者にストレスなく共有しやすく、物語の器として上手く機能していると思います。多くの読者に物語を届けるための、バランス感覚の良さが感じられました。

　また登場人物の心情や行動が読者の共感を呼ぶようにストレートに描かれていることもポイントです。小細工抜き直球勝負のライトノベル作品として評価しました。こうした描写が物語に強力な推進力を与えていると思います。

　主人公・逆鱗のハルトはじめ、仲間のパーティー・白薔薇のメンバーが素直に魅力的に描かれていることも、読者がつまずくことなく物語に入り込める要因になっているのではないでしょうか。この親しみやすさが作品成功の一因と感じました。