新紀元社 / Shinkigensha

かみつき! ~お憑かれ少年の日常~

かみつき! ~お憑かれ少年の日常~

シリーズ名:モーニングスターブックス
著者:仏ょも
イラスト:riritto
定価:本体1,300円(税別)
四六 308ページ
ISBN 978-4-7753-2120-1
発行年月日:2023年11月20日
在庫:在庫あり

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本の紹介

恥じらう神様も、またいいものである。

 昨今、人類はこの世ならざるものの存在と共存(時には敵対)する体制を作り上げていた。そんな時代を生きる中学生、西尾暁秀。生まれながらにして神様の加護持ちであり、現世に酷似した世界で人生を送った前世の魂とそれに付随する記憶を持った、ちょっと特殊な少年であった──。
俺の敵になるなら容赦はしない!(後ろにいる神様が)

 どうやら俺の魂は世界の壁を超えたらしい。
出産のかなり前から難産になることが想定されていたり、無事に生まれてくる可能性が低いと言われたりしたのもこのせいだ。神様曰く、俺の魂と肉体が釣り合っていなかったとのこと。
『魂が持つ情報量が多すぎて肉体が悲鳴を上げとったからの。妾の処置がもう少し遅かったら死んどったぞ、マジで』
そういうことらしい。
つまるところ神様は文字通り命の恩人なのだ。
加えて、今も神様のおかげで生活ができているところもある。
ここまでしてもらっておきながら死んだ後のことを騒ぎ立てるとか……それこそ筋違いが過ぎるというものではなかろうか。
『お主が良いならそれで良いわい』
純粋な感謝に弱いらしい神様は、そう言って会話を切ろうとする。
顔を明後日の方向に向けているため表情は窺えないが、その耳が真っ赤に染まっているのは誤魔化せない。うむ。恥じらう神様もまたいいものだ。

「にーしーおー。あーきーひーでーさーん」
で、問題はさっきから俺の名を連呼している少女なんだが。
『ありゃ確信犯じゃからなぁ』
苦笑いしている神様曰く、ああやって俺の名前を連呼することで彼女は『自分はそれを許されているくらい親しい存在なんだぞ』と周囲にアピールしているらしい。
『ついでにお主に負い目を作って「ごめんなさい! この責任は働いて返します!」ってやるためのものでもあるの』
なんというマッチポンプか。
事実、俺としても彼女の家─具体的には家計簿─がどんな状況に置かれているのかを知っているため、今更名前を呼ばれた程度でどうこうするつもりはないと本人に明言している。
ただ、許可を貰っているからといってここまで明け透けに実行できる人間はそうはいないわけで。
『だからこそ、じゃな。寄るなら大樹。巻かれるのであれば長いモノ。中途半端が一番いかん。あやつはそれをしっかりと理解しておる』
俺としてもそうだが、神様的にも腹の内を隠して近づいてくる輩より、ああして正面から来る人間のほうが好ましいらしい。
つまるところこれは、俺たちが周囲の連中に本名を知られることを忌避していないことを知っているからこそできる距離の詰め方。言うなれば彼女なりの処世術というやつなのだ。加えて、彼女が頼りにしているのは俺一人ではない。

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