シリーズ名:モーニングスターブックス
著者:江本 マシメサ
イラスト:笹原 亜美
定価:本体1,300円(税別)
四六 356ページ
ISBN 978-4-7753-1946-8
発行年月日:2021年09月04日
在庫:在庫あり
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本の紹介
山暮らしで見つけた癒しの新婚物語!
苦労人の養蜂家・イヴァンの花嫁は、蜂蜜で人を癒す蜜薬師!?
山奥で繰り広げられる、賑やかで幸せたっぷりなハニーライフ!
「小説家になろう」連載 + 書下しエピソードも!
オクルス湖のほとりで暮らすイェゼロ家は、養蜂業を営む大家族。イェゼロ家の男どもは皆働かず、十四番目の子として生まれた末っ子のイヴァンだけが、幼い頃から十三人の兄に代わって必死に一家を支えてきた。家族にこき使われるイヴァンだが、偶然出会った山の男・マクシミリニャンから「一人娘のアニャを嫁にもらってほしい」と懇願され、実家を離れることを決意。そこで初対面した花嫁のアニャは、蜂蜜を使って人々を癒すという“蜜薬師”だった!?
苦労人な養蜂家と蜜薬師の新妻が、大自然の中で送る賑やかでスイートな新婚生活。美味しいものたっぷり&幸せ満載な、癒しの山暮らし物語!!
きつく閉めてあった蓋を開き、先端の樹皮を削いだ木の枝で蜂蜜を掬う。バターかと思うほどねっとりしていて、ほのかに森の中にいるような香りを感じる。口に含むと、熱した砂糖のような香ばしさと品のある甘みを感じた。
「すごい……! こんな蜂蜜があるなんて」
「うまいであろう? 我が家、自慢の蜂蜜だ」
「おじさん、養蜂家なんだ」
「ああ。我らは、森の木々や花からの蜂蜜で、生計を立てているのだ」
「信じられないかもしれないけれど、蜂蜜には傷を治す力があるのよ。ナイフでうっかり切ったときも、蜂蜜を塗ったらすぐに治るの」
そんな話など聞いたこともないが、彼女は“蜜薬師”としてマーウリッツアの村人からも信頼されているとマクシミリニャンが話していた。
今は、アニャの治療を信じるしかないのだろう。
話しながらも、アニャは俺の顔に蜂蜜を塗りたくっている。顔中ベタベタだ。
「唇も、乾燥しているわね」
そう呟くと、アニャは俺の唇に蜂蜜が付いた指先を這わせる。
「むっ⁉」
「喋らないで、大人しくしていなさい」