シリーズ名:モーニングスターブックス
巻数:1
著者:みかんゼリー
イラスト:桑島 黎音
定価:本体1,200円(税別)
四六判 324ページ
ISBN 978-4-7753-1607-8
発行年月日:2018年12月17日
在庫:在庫あり
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本の紹介
平凡な男子高校生だった「俺」は、告白もしていない相手にフラれるという不幸に見舞われたあと暴走車に撥ねられ、気が付けば異世界に転生していた――テオドールという名の赤ん坊として。
裕福な貴族の長子だし、将来イケメンになること間違いなしな可愛さだし、チート能力がないのは残念だが、普通に幸せになろう……と決意するも、行く手にはなぜだかトラブル満載で!?
乙女ゲームの世界に転生したことにまったく気付かないままシナリオを改変していくテオドールの未来やいかに!
第2回モーニングスター大賞受賞作。
なんだよ、意外そうな顔をしやがって。俺だって、いちおうは反省するんだぞ。
「ま、わかってもらえて、よかったですよ。そうですねぇ、坊ちゃんにいいのは……ちょっと待っ
ていてくださいよ」
そう言って、ケヴィンは裏口から館に入るとしばらくして麺棒を二本持って出てきた。
西洋の取っ手が付いた麺棒じゃなく、日本でよく見るうどんや蕎麦を伸ばす細長い麺棒だ。同じ
長さじゃなく、一本は蕎麦の店で見るような長いヤツで、もう一本は短い。家庭用?
その短いほうを渡される。
「じゃ、ちょっと打ち合ってみますか?」
「いいの?」
「いいも悪いも、そのうち学んでいただく予定だったんで、いまから始めても構わないでしょう。
今日は木剣を用意していないので、これで代用しましょう」
ようし、真剣は駄目だったけど、この麺棒ですごいって言わせてやる。体ができてないってだけ
で、チートの可能性はまだあるはずだ。
そして、簡単にあしらわれた。
「そうか、ありがとう。そこでね、君にも従者が必要になってね。──リチャードだよ。六歳にな
る。君のひとつ上だね。セバスの曾孫なんだ。よろしく頼むよ」
ほほう。従者ですか! なんか貴族っぽい。あ、俺、貴族だった。あのセバスの曾孫かぁ。きっ
と、優秀なんだろうな。
「テオドールだ、よろしくね、リチャード」
うん、仲よくしよう。そうして握手をしようと、右手を出す。
「──リチャードです、よろしくお願い致します……」
ボソボソと話して、ちょん、と、手に触れただけだった。
……大丈夫か、コイツ。